夢ン中
ネズミと教会。
今日も明後日も雪。
「しっかし、寒いなぁ。」
一人の少年がつぶやく。これはこの話の主人公の一人。
多分これから、一人の主人公になっていくと思う。
「教会にでも行ってみるか・・・・」
教会に行くと、誰もいない。
普通はいるはずなのに。そう。この教会はもう使われていない。
なぜか。
もう何十年も神父も信者もいないのに、取り壊しすらされていない。
そのうち神がいない教会として、この街のシンボルになっている。
だけども少年にとって、自分にとっては欠かせない場所だ。
毎日、誰もいないこの教会でただ一日を過ごしている。
「サムイネ。シュータ。」
一匹のネズミが少年に語りかける。
「チュータか。びっくりしたなあ。」
「学校ハ,ドウダッタ?」
「どうもこうもないさ。先生は頭でっかち。友達はバカばっかし。あ、シャレじゃあないよ。」
「アタマデッカチ、アタマデッカチ。ククククク。」
秋太が答えると、ネズミは可笑しそうに、アタマデッカチ。
と、繰り返す。
「そろそろ、暗くなってきた。じゃあ、明日ね。」
「バイバイ。マタネ。」
次の日も又、秋太は教会に来た。
「今日はね、先生がね・・・・」
いつものようにチュータに愚痴と、その日あったことを話す。
チュータはどれも、楽しそうに聞く。
チュータは、秋太と大の仲良しだった。
この、街での唯一の友達。
小さい頃から、ずっと一緒。
秋太だけの秘密の友達だった。
そして、次の日も、その次の日もチュータと一緒に話をする。
チュータはネズミだけど、自分の立場だけを尊重する偉そうな先生より、
何にも考えない脳なしの友達より、すごく大切だった。
「チュータ!今日は何する?」
「ウーン。ソウダネ。ボクノハナシデモスル?」
「うん!」
「ボクトボクノ仲間達ハネ、普通ノネズミトチガウンダヨ。」
「どう違うの?」
「秘密。」
チュータは意地悪そうに笑った。
「アッ、今日ノ学校モツマンナカッタ?」
「うん。すっごく詰まんないー」
「アハハハ。」
秋太が家に帰ると、誰もいなかった。
この街では当たり前。親は皆平日は出稼ぎに行っている。
この街はいつからか、雪しか降らなくなった。
なので、作物も何も育たないので、遠くの街に出稼ぎへ行っているのだ。
秋太は、チュータがいればな、と思った。
「今日も、一人ってことか。」
秋太が詰まんなそうにつぶやくと、一匹の虫が迷い込んできた。
「虫?この街に?」
この街は虫にとって最悪な環境なので、虫はこの街には一匹も住んでいないはずだった。
なのに、今ここにいる。
「・・・?」
「ボクダヨ。」
「・・・・チュータ?」
「アタリ。」
するとチュータが目の前に現れた。
「チュータ・・・そんなこともできるの?」
秋太が不思議そうに聞くと、
「マア、ダテニ教会ニスンデタワケジャナイカラネ。」
「ふーん。なんか解らないけど、すごいね。チュータ。」
すると、チュータは得意そうに、
「フフン。」
とつぶやいた。
「今日モ、ヒトリナンダロウ?」
「まあね。」
「ダカラ、アソビニキテヤッタヨ。」
秋太は嬉しくなって、チュータをもてなした。
ケーキに、チーズ。紅茶にチキン。
「・・・ボクノ事、ハナシテアゲル。」
チュータが言った。何時かの約束。
「うん!聞かせて!何々?」
「ソノマエニ・・・・・」
チュータは少し間をおいて、喋り始めた。
「教会ガツブサレルコトニナッタ。」
チュータのいきなりの発言に秋太はとまどった。
「潰されるって!?どういうこと!?」」
「・・・・・今マデツブサレナカッタノハ、ナンデダト思ウ?」
チュータが質問する。
「・・・?え・・・っと?・・・・何で?」
「ボクガマモッテカラダヨ。サッキ、ボクガ変身スルノミタデショ?」
「うん。」
「ソノ時点デワカッタヨネ。ボクガ普通ノネズミジャナイコト。」
「ま、まあ。」
「デモ、モウボクハ守レナクナッタ。」
悲しそうにつぶやく。
「どうして?」
秋太が不安そうに聞く。
「仲間ガ、一匹モイナクナッタカラ。昨日、最後ノ一匹ガイナクナッタ。ボクヒトリジャ、モウ守レナイカラ。」
「・・・・・・・どうして皆いなくなったの?
「ソレハネ。皆、コノ寒イ街デイキテイクコトヲ、諦メタノサ。
「もう、こんな寒い街で生きていくことには、こりごり。もっと安心して暮らせる暖かい街に移りすむ。」ッテネ。」
「ダカラ、ボクノ住ミ家ハ、ナクナルカラ、オ別レヲ告ゲル事ニシタ。」
「どうして!?この街には住めないの!?」
秋太は叫んだように言う。
大切な場所と、大切な友達がいなくなるから。
自分は、チュータと協会なしでは生きていけないと思うくらいだった。
すると、チュータは首を横に振って言った。
「ウウン。ゴメンネ。ボクラネズミハ、仲間ガ一人デモイナイトスメナイコトニナッテル。ダカラ・・・・」
「そんな・・・」
泣きそうな声で言った。
「アエナクナルワケジャナイ。ソノウチアエルヨ。
世界ハ意外トセマインダ。マタアエルヨ。ソレニソコマデ遠クハイケナイトオモウヨ。」
「・・・・・・・・・・・・・」
秋太は涙が止まらなかった。
「シュータ、キットモウスグ、新シイ仲間ニ出会エルヨ。
コレダケハ、分カル。理由ハナイケド」
沈黙が続く。
ネズミの目にも涙があふれてる。
「ジャア、マタネ」
・・・・この、マタネは正しいのか分からない。
秋太もネズミもそう思っていた。
それでも、ネズミは笑いながらそういってチュウ、と鳴いた。
ネズミと教会。完。そして次へ。
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